「あなたには普通でも、私には特別」スイスの友人と嵐山

「あなたには普通でも、私には特別」スイスの友人と嵐山

〇 スイスの友人との再会は嵐山

「また京都に行くわよ。時間ある?」

アリスからそんなメッセージが届いたのは、梅雨が明けてすぐの頃だった。彼女とは昨年スイスで出会っている。日本文化の展示会に出展していた僕に、ボランティアとして親切に話しかけてくれたのが彼女だった。金髪で長身、そして書道に夢中な少し不思議なスイス人女性。以来、メッセージのやりとりを重ねて半年ばかり、今回は彼女が日本にやって来ることになったのだ。

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彼女はこれまでにも何度も日本を訪れていて、特に京都はお気に入りらしい。驚いたのはその知識の深さだった。「清水寺と金閣寺くらいしか行ったことないな」と僕が言うと、「じゃあ私が案内してあげる」と、アリスはさらりと言い返した。

真夏のある日、僕らは京都駅で待ち合わせした。アリスは、駅ビルを出たすぐのところで僕を待っていた。サングラスをかけていて、落ち着いてすらりと立っている姿は、とても洗練されていて、まるでもう何年も京都に住んでいる人のように見える。彼女は、僕を見つけると、こちらに向かってきて、「ハイ」と僕に笑いかけてくれた。
そして僕たちは、JR嵯峨野線に乗って嵐山へ向かった。

「嵐山は夏が一番きれいだと思うの。川の風が気持ちいいし、音がやさしいの」

そう言いながら、彼女は桂川沿いの小道を歩き、時折立ち止まって写真を撮っていた。そのひとつひとつの仕草に、日本を心から楽しんでいる様子がにじんでいた。それとは対照的に、初めて嵐山に来る僕は、迫りくるたくさんの観光客とぶつかりそうになりながら、キョロキョロと道沿いのお店やレストラン、桂川の景色を見回していた。完全に、僕が観光客で、アリスが案内人だった。

〇 日本の水は柔らかい

「ちょっとボートに乗らない? 私ここで漕いだことあるの」

桂川に浮かぶ貸しボートに乗って、僕らはゆっくりと水面を進んだ。僕がオールを握り、彼女はカメラを構えたり、景色に見入ったりしていた。
照りつける日差しに水面が反射してキラキラと光る。その向こうには渡月橋が架かっている。そして僕は、スイスから来たアリスと一緒に小さなボートの中に座っている。なにか、日常と切り離された世界のように感じる。

「こうしてると、まるで別の世界に来たみたい。スイスの湖も大好きだけど、日本の水はもっと柔らかく感じるの」

「柔らかい水?」それってどんな水だろう?よくわからなかったけど、言葉のセンスが、なんだか日本っぽくて素敵だなと思って、僕はアリスに笑いかけた。

ボートから降りたあとは、竹林の道を歩いた。彼女は「ここの風の音が大好き」と言って目を閉じて立ち止まり、静かに耳を澄ませていた。背の高い竹が風に揺れる音が、確かにどこか心を整えてくれるようだった。たしかに、真夏とは思えない、涼やかな世界が僕たちを包んでいた。

その後、天龍寺へ足を延ばした。

〇 日本庭園で語学トーク

「池泉回遊式庭園って知ってる? ここの庭、昔の日本人が“歩く芸術”として作ったんだって」

そう語る彼女の表情は真剣そのものだった。僕は資料集でしか見たことがなかったその庭園を実際に目の当たりにし、言葉を失った。静かな池、計算された石と木々の配置、背後に広がる嵐山の山並み。その全てが時間を超えて迫ってくるようだった。

抹茶アイスでひと休みしていたとき、ふと語学の話になった。

「そういえば、日本語の勉強は続けてるの?」

「もちろん!毎日少しずつ。最近はオンラインで日本人の先生と話してるの。会話ができると、日本がもっと近く感じられるから」

そのとき、僕は以前試してみた英会話アプリのことを思い出した。
僕はひそかにネイティブキャンプというアプリで、すき間時間に英会話を練習しているのだ。

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「言葉がわかると、旅がもっと深くなるよね」と彼女が言ったとき、僕も思わずうなずいた。
アリスのように“ことばでつながる”国際交流は、本当にかけがえのない経験になる。

〇 「あなたにはノーマルでも、私には特別なの」

僕たちは天龍寺の裏手の小さな山に登った。

「ここ、前に一人でも登ったんだけど、上からの景色が大好きなんだ」

炎天下の中、急な坂道に汗だくになりながら登りきると、広がる景色に彼女は夢中でシャッターを切った。周囲の山々を見つめながら、彼女が感嘆の声をもらしたとき、僕はよくわからなかった。「いやいや、そんなお世辞いらないから」そう思って、僕は先に歩を進めながら言った。

「スイスの山の方がよっぽどきれいじゃない?」

彼女は一瞬黙り、それから僕の目を見てこう言った。

「あなたにはノーマルでも、私には特別なのよ」

その言葉にはっとさせられた。
僕たちはつい、日常の美しさに気づけなくなってしまう。でも彼女の目には、ここでしか出会えないものがちゃんと映っていたのだ。僕には、岩肌が露出して鋭利に切り立つスイスの山のほうがずっと感動的に見える。でも、それを見慣れた彼女には、緑が生い茂る日本の山のほうがスペシャルな存在なのだ。僕にはまだ整理ができていなかったけど、つまりそういうことなのだ。

夕暮れの中、嵐山の駅まで一緒に歩いた。蝉の声が少しずつ弱まり、風が心地よくなっていた。

また、どこかで会おうね。日本でも、スイスでも。きっと、また」

彼女がそう言って手を振る姿を見ながら、僕はまたいつか、どこかの風景の中で再会できる気がしていた。