バンコクの夜、2年ぶりの再会はローカルな場所で

バンコクの夜、2年ぶりの再会はローカルな場所で

〇 待ち合わせはオープンカフェで

 バンコクで所用を済ませた後、同僚と別れた。彼は今日のフライトで帰国する。僕はひとり残って、カオサン通りのあたりにもう一泊。タイはトランジットしたことは何度かあるが、入国は初めてなのである。もっとこの空気を感じていたい。
 ここは刺激的で、混沌としていて、でもどこか懐しい。市街地の車のクラクションも、人の声も、甘いスパイスの香りも、すべてが生き物のようにうごめいている。

 その夜、僕はナナと再会した。彼女とは語学交換サイト「Interpals」で知り合い、2年前に日本の京都で実際に会った。僕が京都を案内した日のことは、今でもはっきり覚えている。そして今回は、僕がナナにバンコクを案内してもらうことになったのだ。

 ホテルの表にあるオープンカフェの椅子に座って待っていると、前の道路に静かにクラウンが止まった。ナナは、バンコクの政府機関に勤めている。SNSでもその様子は見知っていたが、やはりエリートなのだ。車から降りてきたナナは、京都で会った時と変わらぬ笑顔だったけれど、どこか洗練されて見えた。

 「ホテル、気に入った?」と聞かれたとき、僕は大きくうなずいた。「うん、かなりね。僕の好みにどんぴしゃだよ」
 この宿も、彼女に進めてもらい予約したのである。カオサン通りから徒歩圏内で、外観はシンプルなのに、内部にはアジアらしい装飾がちりばめられていて、とてもおしゃれ。値段も手ごろで、旅慣れたバックパッカーたちに人気があるのも納得だった。

 ちなみに、バンコク滞在中のネット接続には、【TORA eSIM】を使った。SIMカードの差し替えが不要で、スマホにQRコードを読み込むだけですぐに通信ができるのは本当に便利だった。一昨年スペインで使った別のeSIMは、入国して設定した後も一晩通信できなかっただけに、この手軽さは僕に大きな安心感を僕に与えてくれた。タイだけでなく他のアジア諸国でも使えるプランがあり、今後の海外旅行でも重宝しそうだ。

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〇 ディナーは超ローカルに

 まずは晩ごはんへ。僕は観光客向けのきれいなレストランよりも、地元の人たちが集まるような場所に行きたいんだ。ナナにそう言うと、道路脇の屋台に連れて行ってくれた。歩道に無造作に置かれたプラスチックの椅子とテーブル。煙が立ちこめる中、店主らしきおばちゃんが巨大な中華鍋を振るっている。

 「こういうの、京都にはないでしょ」とナナは笑った。確かにない。だけど、なんとも言えない魅力がある。ガパオライスとトムヤムクン、それに氷入りのタイティー。シンプルなのにうまい。とびきりの豪華さがあるわけではないが、旅先でしか味わえない温度がある。「ああ、僕は今バンコクにいるんだ」そう感じることができるんだ。

 腹ごしらえの後は、カオサン通りのバーに。昔からバックパッカーの聖地として知られているこの通りは、今も変わらず旅人たちでにぎわっていた。僕たちが入ったのは、通り沿いにある二階建てのバー。僕たちはテラス席に座り、リオビールのボトルを傾けながら、下を歩く人々を眺めた。

 英語、ドイツ語、フランス語、何語かわからない言葉が、耳に入っては消えていく。人が交差する場所には、いつもエネルギーがある。ナナとは、仕事のこと、日本での思い出、そして今のバンコクのことを、少しずつ話した。

〇 締めはタイの若者に大人気のパンケーキ

 「最近、若い子の間で流行ってるスイーツがあるの」とナナが言った。「夜遅くまでやってるパンケーキ屋さん、行ってみる?」と。

 時間はすでに23時を回っていたが、せっかくなので行ってみることにした。車で10分ほど走った先に、その店はあった。店の前には、若者たちの行列ができていた。タイの若者は、深夜になっても本当に元気だ。

 注文したのは、バナナとココナッツのパンケーキ。たっぷりのコンデンスミルクがかかっていて、夜中に食べるには少し背徳感のある甘さだった。でも、そんな時間に、そんな場所で食べるからこそ、うまい。ナナも「甘すぎる〜」と笑いながら、ぺろりと平らげていた。

 その後、ホテルまで送ってもらった。フロントの前で立ち止まり、名残惜しそうに顔を見合わせる。もうすぐ朝になり、僕は飛行機に乗って日本に帰る。次に会えるのがいつになるかはわからない。

 最後に、僕たちは軽くハグをして別れた。長くも短くもない、ちょうどいい距離感。言葉にせずとも、通じるものがあった。

 ナナが去った後、僕は一人でホテルの前のオープンカフェでビールを飲みながら、今夜のことを思い出していた。喧騒と優しさが入り混じった、忘れがたい時間だった。出会いと再会は、旅の中で最も濃密な瞬間をつくってくれる。だから僕は、またどこかの国で、誰かと会える日を楽しみにしている。
 僕はバンコクの夜空を見上げながら、スピッツの「君が思い出になる前に」を口ずさんだ。