何も起きない時間が、いちばん豊かだった。レ島での二泊三日

何も起きない時間が、いちばん豊かだった。レ島での二泊三日

レ島には、二泊することにしていた。
島の中心地、サン・マルタン・ド・レ。
海沿いの要塞のすぐ近くにある、Airbnbでも人気の民泊だ。

今回の旅で、唯一お金を払って泊まる宿
少しだけ背筋が伸びる。

TGVでラ・ロシェルに到着したあと、駅近くのレストランで遅い昼食をとった。
そのまま、海の要塞を眺めながら、ゆっくり散歩する。
空は広く、風は少し冷たい。

夕方、宿のオーナーが車で迎えに来てくれた。
運転しているお父さんは英語が話せないらしく、大学生の息子が同行してくれて、通訳をしてくれる。
車内で、レ島の歴史や、この島がどんな場所なのかを教えてくれた。

宿の前で車を降り、手を振って別れる。
初対面なのに、不思議と安心感のある家族だった。

荷物を置き、港の目の前にあるレストランのテラス席で夕食をとる。
海に沈みかけた光が、水面をオレンジ色に染めていた。

翌朝、早く目が覚めた。
海沿いを歩き、要塞の上を進む。
五稜郭のような形をしたその要塞は、とにかく壮大だった。
石の塀にもたれて、しばらく大西洋を眺める。
波の音しか聞こえない。

スーパーで買い物をした。
ボルドーの赤ワインが7ユーロ。
ヤギのチーズ、スモークサーモン、パン。
これだけで、もう十分だ。

宿に戻り、簡単な朝食をとる。
それから、近くのレンタサイクル屋へ向かった。
……閉まっている。

そういえば、昨日アンが言っていた。
「今はオフシーズンだから、お店、ほとんど閉まってるんじゃない?」

観光案内所に行き、開いている可能性のある店を教えてもらう。
でも、実際に行ってみると、すべて閉まっていた。

仕方ないな、と思いながら、海の見える丘に座って、ぼんやり海を眺める。
ここで役に立ったのが 【TORA eSIM】 だった。
島でも回線は安定していて、宿のオーナーにメッセージを送ることができた。

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「自転車を、貸してもらえたりしませんか?」

ダメもとだった。
でも返事はすぐに来た。

「父の古い自転車でよければ、使っていいよ」

なんて親切なんだろう。

本当は島を一周するつもりだった。
でも出発は、予定より遅い午後2時。
半周、西の岬を目指すことにした。

島はとても平坦で、サイクリングには最適だ。
サイクリングロードが島中に張り巡らされていて、
すれ違うたびに「ボンジュール」と挨拶を交わす。

目に入るのは、海、カキの養殖場、塩田、ブドウ畑。
景色が、どこまでも続く。

ビーチで休憩しながら、4時ごろ、西の端にある灯台
Phare des Baleines に到着した。

売店でチケットを買い、らせん状の階段を登る。
下を見下ろすと、一番下が見えて、思わず足がすくむ。
でも、その渦を巻いた階段は、どこか芸術的でもあった。

展望台に立つと、ものすごい風。
自撮りをしようとしたが、スマホが飛ばされそうになる。
諦めて、ただ海と島を眺めていた。

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帰り道は、東へ。
それは、逆風との戦いだった。

借りた自転車はかなり旧式で、
ハンドルはカマキリのように曲がっている。
上体が起きる分、風をもろに受ける。

漕いでも進まない。
日が沈み、小雨も降ってきた。
1キロ進むのに、驚くほど時間がかかる。

正直、かなりきつかった。

それでも、7時ごろ、なんとか宿にたどり着いた。
熱いシャワーを浴び、冷えた体をほぐす。

少し休んでから、朝買ったチーズとスモークサーモン、ワインを開けた。
体が、ゆっくり元に戻っていく。

翌朝、チェックアウトまで海沿いを散歩し、部屋を片付けて宿をあとにする。
バスでラ・ロシェルへ戻り、港の前のレストランで、カキと白ワインを楽しんだ。