
「君の家、鈴鹿サーキットに近いよね?泊まらせてもらえないかな?」
そんなメッセージが、カウチサーフィンのアプリに届いたのは、F1日本グランプリの約一週間前だった。
送り主はカナダ出身の30代男性。F1観戦のために日本に来るとのことで、宿泊先を探していた。F1開催週の鈴鹿や周辺都市は、例年どおりすでにホテルが満室。僕の家は鈴鹿サーキットから比較的アクセスが良く、タイミングも合ったので、快諾した。
彼が我が家にやって来たのは金曜の午後。
すでに近隣はF1ムード一色だった。駅にはフェラーリやレッドブルのロゴ入りウェアを着た外国人が集まり、コンビニでは英語やスペイン語が飛び交い、まるで一瞬だけ“海外の都市”になったような空気が流れていた。
海外ファンでにぎわう四日市の夜
その夜、「せっかくだから街に飲みに行かないか?」と僕が提案。彼ももちろん「Great idea!」と即答し、僕たちは電車で繁華街へ向かった。
金曜の夜の街は、いつも以上ににぎわっていた。特にこの週末は、海外からのF1ファンが目立つ。駅前の居酒屋やバーは外国語が飛び交い、国際色豊かな空間になっていた。
海鮮居酒屋でお腹を満たした後に、ダーツバーに寄った。そこはまさにF1ファンの社交場で、イギリス人、オーストラリア人、ブラジル人、それぞれの国から来たモータースポーツファンが集まり、ビール片手にダーツやF1トークに花を咲かせていた。
彼もすぐに溶け込んで、楽しそうに話していた。僕も自然と通訳や橋渡しをしつつ、日本のF1文化や地元のことを話す機会にもなった。
「ホステスって、どんな感じ?」
その帰り道、彼がふとこんなことを言い出した。
「ところで…日本のホステスって、どんな感じなの?」
唐突すぎて一瞬戸惑ったけれど、旅先での好奇心は理解できる。彼にとっては、日本文化のひとつとして興味が湧いたのだろう。
「じゃあ、英語が通じそうなお店に行ってみようか?」
僕はキャバクラには詳しくなかったけど、入り口のボーイさんに「外国語が話せそうな人いる?」と確認して、一軒の店に入った。
お店に入ると、彼の担当になったのは、地元の大学に通う20歳の女性。英語はペラペラというわけではなかったが、彼と向き合い、片言の英語で一生懸命コミュニケーションを取っていた。
「ナイストゥミートユー。マイネームイズ◯◯」「アイム フロム ミエ…ユー?」
慣れない英語に戸惑いながらも、表情やジェスチャーを駆使して、会話を続けようとする姿はとても健気で、どこか心を打たれた。彼も嬉しそうに相槌を打ち、ゆっくりとした英語で返していた。
“言葉が通じる”って、単に語学力の問題じゃない。
「知りたい」「伝えたい」という気持ちこそが、会話の本質なのだと思った。
癖になってしまった?2泊目の夜
2泊目の夜は、僕の家で夕飯を作った。スーパーで安く買った肉と野菜を使って、簡単な炒め料理を用意したのだが、彼は「すごく美味しい」と言って、たくさんおかわりしてくれた。
食後、「今日はゆっくりする?」と聞くと、彼は少し遠慮がちにこう言った。
「実は…昨日の夜、すごく楽しかったんだ。もう一度、街に出てもいい?」
もちろん、拒む理由もない。僕たちはまた四日市へ。
まずはクラフトビールの店で地ビールを1杯。店主もF1好きで、彼と楽しそうにドライバーの話をしていた。
そのあと、自然な流れで彼は昨日のキャバクラへと向かった。
そして彼は、前日と同じ女の子を指名。
「ちょっと気に入っちゃったみたいだ」と、照れたように笑う彼。わかるよ。
昨日と同じように、ゆっくりと英語で会話し、時折笑い合う様子は、どこか安心感すらあった。
彼女も昨日よりリラックスしていて、簡単なフレーズを日本語で教えてあげたり、「カナダって寒いんでしょ?」なんて質問したり、会話を楽しんでいた。
なんだかんだで、彼の“日本文化体験”は、鈴鹿のF1以上に、ここでの夜に詰まっていたかもしれない。
国境を越える「体験」の力
翌朝、彼は決勝レースを観るために鈴鹿へ出発。
出発前に言った。
「今年のF1、日本だけじゃなくて、人との出会いが最高だった。また来年も泊まりに来ていい?」
「もちろん!」と僕が言うと、彼は力強く握手をして、サーキットへと向かって行った。
たった2泊。でも、その間に彼は、日本の街の雰囲気、言葉の壁を超えた交流、そしてほんの少しの“夜の文化”まで体験していった。
僕にとっても、自分のまちを“外国人の目”で再発見する機会になった。
カウチサーフィンには、ホテルにはない価値がある。
それは、“人と人”であることを前提にした出会いの連続だからだ。
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